住宅ローン DRAFT

フラット35と変動金利はどっちを選ぶべきか|借入額別シミュレーションで比較

はじめに

住宅ローンを組むとき、金利タイプの選択は返済総額に数百万円から1,000万円以上の差を生む判断です。全期間固定のフラット35と低金利の変動金利を比較して、どっちを選ぶべきか。答えは借入額・返済期間・収入の安定性・金利上昇への耐性によって変わるため、一律には決められません。

この記事では、2026年4月時点の最新金利データと日銀の政策金利推移を踏まえ、フラット35と変動金利の仕組みの違いから、借入額3,000万円・4,000万円・5,000万円それぞれの35年総返済額シミュレーション、そして金利タイプごとに向いている条件までを整理します。

いま住宅ローンを組む人の約8割が変動金利を選んでいる

金利タイプの選択状況から見ておきましょう。住宅金融支援機構が2024年10月から2025年3月に実施した「住宅ローン利用者の実態調査」(2025年4月公表)によると、住宅ローン利用者が選んだ金利タイプの割合は次のとおりです。

約8割が変動金利を選んでいます。低金利の恩恵で月々の返済額を抑えたいという意向が背景にありますが、同調査では「今後1年間で住宅ローン金利が上昇する」と回答した人が73.7%に達しており、金利上昇への意識も高まっています。

こうした状況を踏まえると、変動金利を選ぶか固定金利を選ぶかは「どちらが多数派か」ではなく、「自分の家計が金利上昇にどれだけ耐えられるか」で判断すべきです。

フラット35の仕組みと特徴

フラット35は住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する全期間固定金利型の住宅ローンです。融資実行月に決まった金利が返済終了まで変わらないため、35年間の返済額が契約時点で確定します。

フラット35の主な特徴を整理します。

省エネ・耐震性能が高い住宅を対象とした「フラット35S」を利用すると、当初5年間または10年間の金利が引き下げられます。ZEH水準を満たす住宅であれば当初10年間で最大年0.5%の引下げがあり、総返済額の圧縮効果は大きくなります。さらに「フラット35子育てプラス」は子どもの人数に応じた金利引下げ制度で、他のメニューとの併用で最大年1.0%の引下げが可能です。

フラット35の弱点は、変動金利と比べた金利水準の高さです。2026年4月時点でフラット35の最低金利は2.49%、ネット銀行の変動金利は0.6%台からと、約1.8%の差があります。この差は返済額に直結するため、金利が変わらない安心の「保険料」をどう評価するかが判断の分かれ目です。

変動金利の仕組みと特徴

変動金利型の住宅ローンは短期プライムレートに連動し、金融機関が原則として半年ごとに適用金利を見直します。金利が変動しても返済額の変更は5年ごとに行われ(5年ルール)、金利上昇時も返済額の増加は前回の125%までに抑えられます(125%ルール)。ただし一部のネット銀行ではこのルールが適用されない商品もあるため、契約前に確認が必要です。

変動金利の主な特徴を整理します。

変動金利の強みは金利の低さです。低金利で毎月の返済額を抑え、差額を貯蓄や繰上返済に充てることで元本を早期に減らす戦略が取れます。繰上返済で残高を早く減らせば、将来の金利上昇リスクそのものを縮小できます。

注意すべきは125%ルールの盲点です。返済額の増加は125%に抑えられますが、金利が大幅に上昇した場合は利息の支払いが優先され元本の返済が遅れます。返済期間終了時に未返済の元本が残ると一括請求される可能性があり、125%ルールは「返済額の急変を防ぐ緩衝材」であって「負担を減らす仕組み」ではない点を理解しておく必要があります。

2026年4月時点の金利環境

ここ2年で住宅ローンの金利環境は大きく変わりました。日銀の金融政策正常化に伴う利上げの流れを時系列で確認します。

日銀の政策金利推移:

この利上げを受けて、住宅ローン金利も動いています。

フラット35(21年以上35年以下、融資率9割以下、団信あり)の2026年4月の最低金利は2.49%です。前月比で0.24%の上昇となり、長期金利の上昇が反映された形です。フラット35の金利は10年国債利回りに連動するため、長期金利が上がればフラット35の金利も上昇します。

変動金利はネット銀行で0.6から0.9%台、メガバンクで平均1%超という水準です。2026年4月時点の主要金融機関の変動金利を見ると、SBI新生銀行が0.640%、イオン銀行が0.780%、PayPay銀行が0.850%、ソニー銀行が0.897%といった数字が並んでいます。日銀の利上げで基準金利は上昇していますが、金融機関間の顧客獲得競争が優遇幅の拡大を生んでおり、適用金利の上昇幅は政策金利の上昇幅ほどではありません。

とはいえ、メガバンクの変動金利平均が1%を超えたのは約15年ぶりのことです。変動金利が今後も0%台に留まる前提で35年の資金計画を立てるのは楽観的すぎるでしょう。日銀は「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げる」方針を示しており、追加利上げの可能性を織り込んだシミュレーションが不可欠です。

借入額別・シナリオ別の35年総返済額シミュレーション

フラット35と変動金利で、35年間にいくら返済することになるのか。借入額3,000万円・4,000万円・5,000万円の3パターンについて、元利均等返済・ボーナス返済なしの条件でシミュレーションします。変動金利は「35年間据置き」と「段階的に上昇」の2シナリオを用意しました。

シミュレーション条件:

借入額3,000万円の場合

シナリオ月々返済額35年間の総返済額フラット35との差額
フラット35(2.49%固定)約10.7万円約4,498万円基準
変動・据置き(0.65%)約8.0万円約3,355万円-1,143万円
変動・段階上昇約8.0万円→約9.5万円約3,730万円-768万円

借入額4,000万円の場合

シナリオ月々返済額35年間の総返済額フラット35との差額
フラット35(2.49%固定)約14.3万円約5,997万円基準
変動・据置き(0.65%)約10.7万円約4,473万円-1,524万円
変動・段階上昇約10.7万円→約12.7万円約4,973万円-1,024万円

借入額5,000万円の場合

シナリオ月々返済額35年間の総返済額フラット35との差額
フラット35(2.49%固定)約17.8万円約7,496万円基準
変動・据置き(0.65%)約13.3万円約5,592万円-1,905万円
変動・段階上昇約13.3万円→約15.8万円約6,216万円-1,280万円

変動金利が35年間0.65%のまま推移する最良シナリオでは、借入額4,000万円で約1,524万円、5,000万円で約1,905万円もフラット35より総返済額が少なくなります。住宅の取得費用に匹敵する金額差です。

一方で段階的に金利が上昇するシナリオでも、フラット35の総返済額を下回っています。変動金利が最終的に2.5%まで上昇しても、初期の低金利期間に元本が大きく減っている効果で、フラット35の2.49%固定より総返済額は少なくなる計算です。

ただしこの段階上昇シナリオは「0.65%から2.5%まで20年かけてゆっくり上がる」という穏やかな想定です。5年で2.0%、その後3.0%まで上がる急上昇シナリオでは、借入額4,000万円で差額は約426万円まで縮小します。フラット35のほうが有利になる「逆転ライン」は変動金利が3%を超えて長期間維持される場合に近づきます。

数字だけで見れば変動金利が有利に見えますが、シミュレーションは「過去に起きたことのない金利急騰」を織り込んでいません。自分の借入額・返済期間で「変動金利が何%まで上がったら家計が回らなくなるか」を試算しておくことが、金利タイプ選択の前提条件です。

フラット35が向いている人・変動金利が向いている人

金利タイプの選択は、収入の安定性と金利上昇リスクへの耐性で判断します。自分の状況がどちらに近いかを確認してください。

フラット35が向いている条件

返済額が毎月一定であることに大きな安心を感じる方はフラット35が合います。具体的には次のような状況です。

フラット35は「返済額が変わらない保険」としての性質が強い金利タイプです。保険料に相当するのが変動金利との金利差であり、この差額を「安心のコスト」として納得できるかどうかが選択の基準になります。

変動金利が向いている条件

低金利のメリットを活かしつつ、金利上昇時にも対応できる余力がある方は変動金利が向いています。

変動金利を選ぶ場合の実践的な目安として、「現在の変動金利が2.5%に上昇しても毎月の返済を続けられるか」をシミュレーションしてみてください。借入額4,000万円・35年返済で変動金利が2.5%になると月々の返済額は約14.3万円です。この金額でも家計が回るなら、変動金利を選んで低金利の恩恵を受ける選択に合理性があります。回らないならフラット35、あるいは次に紹介するミックスローンを検討すべきです。

住宅ローンの借入可能額や返済比率の考え方については「住宅ローン借入可能額の考え方」で詳しく解説しています。実際の借入条件は物件価格・頭金・勤務先属性で変わるため、注文住宅の検討段階では注文住宅の一括資料請求サービスで複数のハウスメーカーから資金計画シミュレーションを取り寄せ、金利タイプごとの総返済額を並べて比較するのが現実的です。

ミックスローンという第三の選択肢

フラット35か変動金利かの二択で迷う場合、両方を組み合わせるミックスローンも検討に値します。借入額の一部をフラット35、残りを変動金利にすることで、金利上昇リスクを分散しながら変動金利の低金利メリットも享受できる仕組みです。

借入額4,000万円で半分ずつ組んだ場合の例を示します。

全額フラット35の14.3万円より月1.9万円、年間で約23万円の返済額を抑えつつ、全額変動のリスクも半減できます。変動金利分が2.5%まで上昇しても月々の返済額は約14.2万円で、全額フラット35とほぼ同水準に収まります。

ミックスローンの注意点は、2本のローン契約を結ぶため事務手数料や登記費用が二重にかかることです。金融機関によっては定率型の事務手数料(借入額の2.2%)がそれぞれの契約に適用されるため、借入額が少ないと手数料負担が金利メリットを相殺してしまいます。借入額3,000万円以上で検討するのが現実的なラインです。

よくある質問

変動金利は一気に上がることがあるのか

過去の日本では、変動金利が短期間で急騰した事例はありません。変動金利は短期プライムレートに連動し、短期プライムレートは日銀の政策金利に概ね追随します。日銀は通常0.25%刻みで利上げを行い、利上げの間隔も半年から1年程度です。2024年3月のマイナス金利解除から2025年12月の0.75%到達まで約1年9ヶ月をかけています。「一晩で金利が数%上がる」といった事態は現行の金融政策の枠組みでは起こりにくいものの、中長期的に1.5%から2.0%程度まで上昇するシナリオは十分にあり得ます。

フラット35の金利は途中で変わるのか

フラット35は「全期間固定金利」のため、融資実行時に確定した金利が返済終了まで変わりません。これは契約上の保証であり、市場金利がどれだけ上昇しても返済額は一定です。一方で市場金利が下がった場合にも恩恵を受けられない点はトレードオフです。金利低下局面では、民間の変動金利ローンへの借換えを検討する余地があります。借換え時には審査が必要で、事務手数料・登記費用として30万から80万円程度のコストが発生します。

住宅ローン金利は10年後にどうなっているか

正確な予測は誰にもできませんが、市場の見通しとしては2026年12月末までに政策金利が1.0%程度まで上昇するとの予測が複数のアナリストから出ています。政策金利が1.0%になった場合、変動金利の適用金利は概ね1.0から1.5%程度に上昇すると見込まれます。10年後については不確実性がさらに高まりますが、日銀が「中立金利」と考える水準(1.0から2.0%程度と推定されている)に向かって徐々に正常化が進むというのが大勢の見方です。10年国債利回りに連動するフラット35の金利は、現在の2.5%前後からさらに上昇する可能性と、景気後退局面で下がる可能性の両方があります。

住宅ローンを組む際には、住宅ローン控除による税負担の軽減も重要な要素です。最新の適用条件は「住宅ローン控除の最新ルール(2026年版)」で確認できます。

まとめ

フラット35は全期間固定金利で返済額が35年間変わらない安心感を持ち、変動金利は低金利による返済額圧縮で手元資金を有利に運用できる強みを持っています。2026年4月時点で両者の金利差は約1.8%あり、借入額4,000万円の35年返済では変動金利据置きで約1,524万円、段階上昇シナリオでも約1,024万円の総返済額差が出ます。

どちらを選ぶかは「変動金利が2.5%になっても返済できるか」が一つの判断基準です。耐えられるなら変動金利で低金利のメリットを取り、厳しければフラット35で返済額を固定する。迷うならミックスローンでリスクを分散する選択もあります。

金利タイプの判断は、複数の金融機関やハウスメーカーから資金計画のシミュレーションを取り寄せ、同じ借入額での返済総額の差を具体的な数字で比較するところから始まります。注文住宅の検討段階であれば、間取り・見積もりとあわせて資金計画を複数社から無料で取り寄せることで、金利タイプごとの総返済額の違いを実感できるはずです。

住宅の取得費用全体については「注文住宅の初期費用トータル」、2026年度に利用可能な補助金制度は「住宅取得で使える補助金一覧(2026年度)」でも整理しています。

出典

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